【屋根 外壁】カバー工法で屋根や外壁をリフォームする費用とメリット・デメリット

【屋根 外壁】カバー工法で屋根や外壁をリフォームする費用とメリット・デメリット

近年、屋根や外壁のリフォームはカバー工法がもっともポピュラーです。住宅会社やリフォーム会社に屋根や外壁の改修工事を依頼すると、カバー工法による改修を奨められるケースが多いと思います。しかし、「カバー工法だとどれくらいの費用がかかるの?」「カバー工法のメリット・デメリットを知りたい」が気になる方も多いでしょう。

そこで今回は、屋根と外壁のカバー工法にかかる費用や、メリットとデメリットについて解説したいと思います。

1. 屋根のカバー工法とは?

屋根のカバー工法とは、一言でいえば既存の屋根材の上に新規の屋根材を重ね張りする改修方法です。他に「重ね葺き」「被せ張り」などとも言われます。

近年では化粧スレート(コロニアルまたはカラーベスト)屋根の上に金属屋根やアスファルトシングルを重ね張りするリフォームが増えています。多くのリフォーム会社が屋根工事のリフォームの際に、カバー工法を推奨しているためです。その背景としては、第一に住宅の屋根に化粧スレートが普及したことがあります。

化粧スレート屋根は、それまで日本の住宅の屋根材の主流だった瓦に代わって、30年程前から急速に普及しました。軽量で安価、施工がしやすく対応できる業者も多いので、住宅会社が積極的に採用するようになったためです。また色も豊富で洋風の外観にも合うので、洋風住宅の人気と共にたちまち屋根材の主流になりました。

しかし、当時の化粧スレート屋根は、色あせや塗膜の劣化による美観の低下が比較的早い時期から目立つようになるため、約10年ごとに再塗装が必要でした。そして30年が経過すると、塗装工事で改修するのは難しくなり、葺き替えが必要になるケースが多かったのです。現在、ちょうどこの時期を迎える家が数多く見られます。

葺き替えには既存の屋根材を剥がす手間代や、剥がした屋根材を処分する費用もかかるので、当然工事費が膨らんでしまいます。また、初期の化粧スレートには人体への有害物質であるアスベストを含んでいるため、その撤去や処分の方法も法律で規制されていて、工事費も割高になります。

このような中で、化粧スレート屋根の改修方法の一つとして生まれたのがカバー工法なのです。

2. 屋根をカバー工法でリフォームするときにかかる費用の相場

屋根カバー工法は、主にスレート屋根に対して行う工事です。

おおよその費用相場は1㎡あたり8,000円~1万円、一般的な30坪~40坪の住宅で80万円~130万円がめやすとなります。

カバー工法でリフォームするときにかかる費用は、重ね張りする屋根面積や、交換に使う屋根材などによって変動します。

屋根カバー工法に用いられる屋根材の種類

スレート屋根のカバーによく使われる屋根材は、「ガルバリウム鋼板」「アスファルトシングル」「軽量瓦」の3種類です。

それぞれの屋根材の単価、耐用年数、特徴を以下にまとめました。

屋根材の種類 単価(㎡) 耐用年数 特徴
ガルバリウム鋼板 5,000円~1万円/㎡ 20年~30年 軽いので耐震性が高い。錆びにくく、耐候性も高い。薄い金属のため雨音が響く可能性がある。
アスファルトシングル 5,000円~8,500円/㎡ 15年~20年 洋風のおしゃれな外観。柔軟性が高く、複雑な形の屋根にも施工しやすい。断熱性は低い。
軽量瓦 6,000円~1万2,000円/㎡ 20年~40年 軽いので耐震性が高い。メンテナンスフリーで耐久性に優れる。施工費用がやや高くなる。

屋根カバー工法の内訳

屋根をカバー工法でリフォームするときの工事内容と、各工程でかかる費用は以下のとおりです。

工事内容 費用
足場の設置・撤去 700円~800円/㎡
養生 200円~300円/㎡
新しい防水シートの敷設 500円~1,500円/㎡
新しい屋根材の施工 5,000円~1万2,000円/㎡
新しい軒、ケラバの設置 1,500円~2,000円/㎡
工事管理費・諸経費 工事費用の10%前後がめやす

3. 外壁のカバー工法とは?

外壁のリフォームにもカバー工法が用いられることがあります。既存の外壁に新しい外壁材を上張りする工法であることから、「重ね張り」とも呼ばれます。

従来の日本の住宅はモルタルの外壁が主流であり、リフォームの依頼を受けた外壁塗装業者やリフォーム業者は、築30年程度までは外壁塗装を、外壁の耐用年数である築35年程度では新規張り替えを推奨するケースがほとんどでした。

とくに外壁の新規張替えは既存の外壁材をいったん撤去して、新たに外壁材を張り替える必要があるため、工事費用も工期もかかってしまいます。

近年では住宅の外壁材としてサイディングを使用するケースが主流となり、既存の外壁の上に新しいサイディングを重ね張りするカバー工法のリフォームが増えています。

カバー工法を用いれば、元の外壁がモルタルであっても、上からサイディングを重ね張りしてリフォームすることも可能です。

このような背景があることから、多くのリフォーム会社が外壁リフォームにカバー工法を推奨しています。

4. 外壁をカバー工法でリフォームするときにかかる費用の相場

外壁カバー工法の費用相場は、一般的な戸建住宅(外壁面積100㎡~200㎡)で130万円~220万円がめやすとなります。

カバー工法でリフォームするときにかかる費用は、重ね張りする外壁面積、交換に使う外壁材などによって変動します。

外壁カバー工法に用いられる外壁材の種類

外壁カバー工法に用いられるサイディングには、以下の4種類があります。

外壁材の種類 単価(㎡) 耐用年数 特徴
窯業系サイディング 4,000円~5,000円/㎡ 20年~30年 サイディングの中では価格が安い。レンガ・タイル・木目調などデザインが豊富。防火性も高い。
金属系サイディング 3,000円~7,000円/㎡ 20年~30年 スタイリッシュな外観。耐久性に優れ、熱・凍結に強い。また軽量であるため耐震性も高い。
樹脂系サイディング 8,000円~1万円/㎡ 20年~30年 耐久性に優れ、凍結・衝撃・雨に強い。また軽量であるため耐震性も高い。サイディングの中では価格が高い。
木質系サイディング 6,000円~1万円/㎡ 15年~25年 木の温かみを感じられる風合いと、高い断熱性能がある。腐りやすい、熱に弱いというデメリットがあるため、塗装でカバーする必要あり。

外壁カバー工法の内訳

外壁カバー工法の工事内容の内訳と、各工程でかかる費用は以下のとおりです。

工事内容 費用(一般的な戸建住宅の場合)
足場設置 15万円~20万円
養生 8万円~10万円
防水シートの設置 4万円~6万円
下地の設置 20万円~50万円
水切りの設置 5万円~7万円
新しい外壁材の施工 70万円~120万円
シーリング 25万円~35万円

5. カバー工法のメリットとは?

カバー工法には以下のようなメリットがあります。

費用が安く工期も短い

カバー工法の最大のメリットはコストの削減にあります。

既存の屋根や外壁を撤去する作業が必要ない分、費用を安く抑えられ、なおかつ工期も短縮できます。

アスベストの飛散防止になる

既存の屋根材や外壁材の撤去時に、近隣へのアスベストの飛散防止工事中の雨養生の面などでメリットがあります。カバー工法は注文主のみでなく、施工者の安全も確保できる工法なのです。

雨漏り対策になる

屋根や外壁が二重になることにより、結果的に雨漏り対策にもなります。ただし、万一雨漏りが発生した場合には、その原因特定がより難しくなるというデメリットにもなるので、注文主にとっては「諸刃の剣」になる事を留意しておく必要があります。

6. カバー工法にデメリットはないの?

一般の方にはメリットばかりが伝えられるカバー工法ですが、他にデメリットはないのでしょうか?カバー工法のデメリットについても少しお伝えしておきたいと思います。

屋根や外壁が重くなる

一番のデメリットは屋根や外壁が重くなることです。重ね張りする新規の材料は、軽量であることがひとつの条件になります。屋根や外壁が重くなると、基礎や主要構造部に負担がかかり、建物の耐震性能を損ねることになるためです。また建物の重心が高くなるので、地震の際の揺れが大きくなります。

カバー工法に適した屋根材には金属屋根やアスファルトシングル、外壁材には金属系サイディングなどがありますが、いずれの場合でも現状よりも重くなることに変わりありません。耐震性の面では現状よりも多少不利になるのは否めない事を理解しておく必要があります。

また、既存の化粧スレートの上に化粧スレートを重ね葺きすると、メーカー保証が受けられなくなるので注意が必要です。(下地材の段差が3mm以上あると割れやすくなるというのが理由です。)

既存の屋根材・外壁材による不具合

二番目のデメリットは、既存の屋根材・外壁材を撤去しない事により不具合が生じる可能性があることです。

古い屋根材や外壁材は、多少の水分を含んでいると考えられます。そこを新しい材料で覆ってしまうと、水分まで中に閉じ込めてしまう事になります。湿気がこもり、最悪の場合屋根の下地材まで腐食してしまう事にもなりかねません。

心理的な嫌悪感

三つめのデメリットは、心理的な嫌悪感が残るかもしれないということです。
いくら表面が綺麗になっても、その下には古くなった以前の屋根や外壁が残っているのを気にする方もいらっしゃると思います。また、有害なアスベストを含んだものが家の一部に残っているのが嫌だという方も多いでしょう。これらの事を気にする方にとっては、既存の屋根や外壁を撤去しない事自体が最大のデメリットになります。

4. 火災保険が使えなくなる可能性もある

他には、保険会社の火災保険が使えないことも挙げられます。火災保険に付帯している「風災・雹災・雪災」補償を申請すると、突風や強風、雹、積雪によって損害を受けた場合には補償を受ける事ができます。しかし、カバー工法で修理した屋根は、火災保険が使えなくなる可能性が高くなります。たとえ保険の対象となる工事だったとしても、保険会社から保険金が支払われるのは「原状回復」や「被災部位の修繕」に限られるためです。現状と異なる屋根材にすると、原状回復とは認められない可能性が高いでしょう。(保険会社への事前の相談が必要です。)

このようにカバー工法にもデメリットがあります。カバー工法を推奨している会社からはなかなか教えてもらえないことなので、ご自分でメリットとデメリットをよく検討し、くれぐれも業者の言いなりにならないようにしてほしいですね。

3. 屋根カバー工法の種類

屋根のカバー工法には、既存の屋根の劣化具合に応じて2つの工法があります。
一つは既存屋根の上に、直接下葺き材(アスファルトルーフィング)と屋根材を葺く方法です。既存屋根の傷みが少なく、下地として十分に機能している場合はこの方法で施工します。

二つめは既存屋根の上に、野地板、下葺き材と屋根材を葺く方法です。既存屋根に劣化が見られる場合に採用します。通常は工事費用と工期を抑えられるひとつめの方法で施工します。また既存屋根の傷みがひどく、下地として機能しない場合には、古い屋根材を撤去して葺き替えを行うしかありません。現状をよく確認して最適な施工方法を選択する必要があります。

4. まとめ

カバー工法のメリットとデメリットについて解説してきましたが、結局カバー工法と葺き替えではどちらの方法が良いのでしょうか?

カバー工法のの長所、短所はご説明してきた通りですが、建築の専門家の立場からすると屋根は「葺き替え」、外壁は「新規張り替え」をお奨めしたいと思います。建物の安全性や耐久性を重視した場合には、カバー工法のデメリットは無視できないためです。

しかし、屋根や外壁の工事の費用はとても高額になります。すべて張り替えると、比較的小規模な家でも軽く100万円は超えてしまいます。少しでもコストを軽減したいという方にとっては、カバー工法で削減できるコストは決して少なくないはずです。

コストや工期、アスベスト対策、工事中の雨対策、保険の問題などを総合的に判断して、あなたにとってベストな方法を選択してください。

 

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