屋根の工事には、大きく分けて「葺き替え工法」と「屋根カバー工法」の2種類があり、どちらの工法にも一長一短があります。
結論を言うと、葺き替え工法は費用が高くなりますが、施工後は屋根が新築同様の状態になります。
一方の屋根カバー工法は費用が安く工期も短めですが、屋根の劣化状況や屋根材によっては施工できません(施工が限定的)。
以上を踏まえ、今回は屋根葺き替え工法と屋根カバー工法の工事内容の違いや、どちらで施工すべきかの判断のポイントを解説します。その前に、「塗り替え」という方法もありますので、まずはそこから説明していきましょう。
築年数が浅い場合は「塗り替え」でも
新築後10年前後であれば、屋根表面の塗料が変色したり少々剥げたりしていても、下地までは傷んでいないケースもあります。下地に少々の腐食があっても、この時期であれば、補修をして塗料を塗り替えるだけで対応できます。
葺き替え工法と屋根カバー工法の違い
それでは、葺き替え工法と屋根カバー工法の工事内容や違いについて解説します。
葺き替え工法とは
葺き替え工法のメリット | 葺き替え工法のデメリット |
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葺き替え工法は、既存の屋根を解体・撤去して、新しい屋根に葺き替える工法です。
屋根材だけでなく、野地板や防水シートといった下地材も新しいものに交換します。
既存の屋根を解体・撤去する費用や下地材を交換する費用などがかかりますが、そのぶん屋根が新築同様の状態になるため、不具合や劣化状況がすべて改善されます。
また、新しい屋根に葺き替えることで、次のメンテナンスまでの期間が長くなるというメリットもあります。
葺き替えのメリット
屋根材の種類を選べる
屋根にはいくつか種類があります。それぞれ素材によって特徴や耐用年数が違ってきます。屋根材ごとのメリットデメリットについてはこちらの記事「屋根材の種類と選び方」で詳しく解説していますので、ぜひ一度ご覧になってください。葺き替え工事においては、今の屋根を丸ごと撤去するわけですから、それまでと種類の違う屋根材を選ぶことも可能になります。
軽くして耐震性UP
例えば、熱に強く塗り替えのいらない瓦屋根。昔から日本ではお馴染みの「和瓦」、デザイン性がアップした「洋瓦」などがありますが、重量があるので、地震のときには揺れが大きくなるリスクがあります。そこで、耐震性の観点から軽い素材のスレート屋根などに変更するという選択肢もあります。震災以降、現にその手の工事が頻繁に行われています。
サビにくくして耐久性UP
また、リーズナブルで重宝されるトタン屋根ですが、「錆びやすい」「雨音がうるさい」「すぐに色が落ちる」「穴が空きやすい」など、デメリットも少なくありません。そこで、トタンよりサビびにくく耐久性が高い「ガルバリウム鋼板」の屋根材に葺き替える工事も行えるわけです。
美観がUP
塗り替えだけでも見た目の美しさは十分回復しますが、さすがに新築同様とまではいきません。しかし、葺き替えであれば、まったく新しい屋根になるわけですから、外観の印象が大きく変わりますね。
防水シートの交換も
古い屋根を取り除き、新しい屋根を取り付けます。屋根と室内の間に設ける防水シートも新しいものになりますので、雨漏りの不安はさらに小さくなるでしょう。
屋根の寿命が延びる
塗り替えの場合、傷んだ箇所は補修しますが、屋根そのものは古いままです。ですが、葺き替えで屋根をリフォームしますと、生まれ変わった屋根の寿命はゼロからのスタートです。塗り替え等のメンテナンスより確実に寿命を長くすることができます。
葺き替えのデメリット
工事日数が長い
今の屋根を取り除き、新しい屋根を取り付ける。工程が増えますし、大がかりな工事になりますので、それだけ日数もかかります。
費用が高め
工事日数が増えるということは、人件費が上がります。また、新しく屋根を買うわけですから、素材による高低はありますが、総じて費用は高くなります。また、撤去した古い屋根の「処分」にも費用がかかります。塗り替えだけでなく、これから述べるカバー工法よりも費用がかかります。その点を頭に入れておく必要があります。
屋根カバー工法とは
屋根カバー工法のメリット | 屋根カバー工法のデメリット |
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屋根カバー工法は、既存の屋根の上から新しい屋根材を重ね掛けする工法です。
重ね掛けする屋根材はほぼ金属製に限られますが、屋根が二重になることで断熱性や遮音性が向上します。
また葺き替え工法と違って廃材がほとんど出ないため、費用を安く抑えることができ、工期も短くて済みます。
ただし、屋根カバー工法は既存の屋根材が瓦である場合や、瓦屋根以外の屋根材でも劣化が進んでいる場合は施工が難しくなります。
カバー工法のメリット
工事が短期間
古い屋根はそのままで別の屋根を新設するので、工事期間はそれほどかかりません。
葺き替えよりもリーズナブル
今の屋根を撤去しなくて済みますから、「解体」と「処分」の費用がかかりません。その分リーズナブルにリフォームができます。
断熱性&遮音性がアップする
新しい屋根と室内との間に古い屋根が残ることになるので、いわば二層構造の屋根になります。外部からの熱は伝わりにくく、内部の熱は逃げにくくなります。夏は涼しく冬は暖か。冷暖房の使用を控え、「エコ」に繋がるかもしれません。
同じ理由で遮音効果も高まります。
葺き替え工法とカバー工法を判断する3つのポイント
屋根を新設する工事を葺き替え工法でやるか、カバー工法でやるか、判断するポイントは以下のとおりです。
屋根工事の工法を判断する3つのポイント
- 現在の屋根が瓦屋根である
- 新築から30年以上経過している
- 1と2以外で屋根工事の費用を安く抑えたい
3つのポイントについて、詳しく解説します。
1. 現在の屋根が瓦屋根である→葺き替え工法
カバー工法は既存の屋根に新しい屋根材を重ねて新設する工法ですので、屋根の重量が増加します。
現在の屋根が瓦屋根である場合は、カバー工法による屋根の新設は現実的ではありません。
瓦の上から新たに瓦を重ねると、屋根の重量が増して耐震性が著しく低下するからです。
よって瓦屋根をリフォームするときは、必然的に葺き替えか、もしくは後述する「葺き直し」という工法を選択することになります。
2. 現在の屋根材が耐用年数を超えている→葺き替え工法
現在の屋根材が耐用年数を超えている場合は、野地板や防水シートまでをすべて新設する葺き替え工法による工事が必要となります。
おもな屋根材ごとの耐用年数は、以下のとおりです。
屋根材の種類 | 耐用年数 |
いぶし瓦 | 40年~50年 |
セメント瓦・コンクリート瓦 | 30年~40年 |
化粧スレート(コロニアル) | 20年~30年 |
アスファルトシングル | 10年~20年 |
ガルバリウム鋼板 | 25年~35年 |
新築から屋根工事を行っておらず、耐用年数に近い年月が経過している場合は、屋根葺き替えを検討しましょう。
3. 1と2以外で屋根工事の費用を安く抑えたい→カバー工法
現在の屋根が瓦屋根ではなく、また耐用年数を超えていない場合で、費用を安く抑えたいならカバー工法がおすすめです。
カバー工法は廃材が出ないため費用を安く、また短い工期で屋根工事ができます。
ただし、過去にカバー工法で工事した屋根に、さらにカバー工法で屋根を重ね掛けすることはできません。
瓦屋根には「葺き直し」という選択肢もある
葺き直しとは、既存の瓦はそのままに、野地板や防水シートなど下地のみを交換する屋根工事です。
耐用年数の長い瓦屋根は、下地材のほうが先に寿命を迎えることが多いため、葺き直しは瓦屋根に適した工法と言えます。
まとめ
屋根の葺き替え工法と屋根カバー工法について、工事内容の違いや、選ぶときの判断のポイントについて解説しました。
どちらの工法が優れているということはありませんが、自宅の屋根の屋根材や劣化状況などが判断のポイントとなります。
その際は、屋根リフォームの実績が豊富な施工業者に必ず現地調査を行ってもらい、適切な工法を選ぶようにしましょう。