屋根のリフォーム
屋根は年々劣化していきます。これはもうどうにもなりません。
タフにできていますが、風雨にさらされ、直射日光を浴び続けているのだから無理もないですね。
忍者でもなければ、ひょいと屋根に登ることなんてできませんから、屋根の状態を目で見て確かめるのはなかなか容易ではありません。異変が起きていても気づきにくいんですね。
万一屋根に不具合が生じて、それに気づかず放置していると、不具合の箇所が拡大したり、雨漏りなどで建物内部に深刻なダメージを及ぼす危険性があります。
定期的に屋根に登って確かめるのが一番ですが、それより確実なのは、屋根の機能が衰えてきたと感じたら、問題が起こる前にリフォームに踏み切ることですね。
今回は、屋根を生き返らせるリフォーム工事について、代表的な2種類の工法の特徴とメリットデメリットについて解説していこうと思います。
ここで言う2種類の工法とは、「葺き替え」と「カバー工法(かさね葺き)」になります。ですがその前に、「塗り替え」という方法もありますので、まずはそこから説明していきましょう。
築年数が浅い場合は「塗り替え」でも
新築後10年前後であれば、屋根表面の塗料が変色したり少々剥げたりしていても、下地までは傷んでいないケースもあります。下地に少々の腐食があっても、この時期であれば、補修をして塗料を塗り替えるだけで対応できます。
築年数が長い場合は「葺き替え」か「カバー工法」
ただし、屋根材の種類や住宅の置かれた環境によっては、補修より屋根自体を新しくした方がいいという場合もあります。また、築年数が20~30年と長い場合は、塗り替えでは間に合わない場合が多く、思い切って葺き替えを検討してみるべきかもしれません。
そもそも葺き替えとは?
表面の劣化だけでなく、錆びたり穴が空いたり、屋根材そのものが痛んでいるときは、屋根本体を新しいものに取り替える、いわゆる「葺き替え」という工法が用いられます。既存の屋根を撤去して、丸ごと新しくするわけですね。
葺き替えのメリット
屋根材の種類を選べる
屋根にはいくつか種類があります。それぞれ素材によって特徴や耐用年数が違ってきます。屋根材ごとのメリットデメリットについてはこちらの記事「屋根材の種類と選び方」で詳しく解説していますので、ぜひ一度ご覧になってください。葺き替え工事においては、今の屋根を丸ごと撤去するわけですから、それまでと種類の違う屋根材を選ぶことも可能になります。
軽くして耐震性UP
例えば、熱に強く塗り替えのいらない瓦屋根。昔から日本ではお馴染みの「和瓦」、デザイン性がアップした「洋瓦」などがありますが、重量があるので、地震のときには揺れが大きくなるリスクがあります。そこで、耐震性の観点から軽い素材のスレート屋根などに変更するという選択肢もあります。震災以降、現にその手の工事が頻繁に行われています。
サビにくくして耐久性UP
また、リーズナブルで重宝されるトタン屋根ですが、「錆びやすい」「雨音がうるさい」「すぐに色が落ちる」「穴が空きやすい」など、デメリットも少なくありません。そこで、トタンよりサビびにくく耐久性が高い「ガルバリウム鋼板」の屋根材に葺き替える工事も行えるわけです。
美観がUP
塗り替えだけでも見た目の美しさは十分回復しますが、さすがに新築同様とまではいきません。しかし、葺き替えであれば、まったく新しい屋根になるわけですから、外観の印象が大きく変わりますね。
防水シートの交換も
古い屋根を取り除き、新しい屋根を取り付けます。屋根と室内の間に設ける防水シートも新しいものになりますので、雨漏りの不安はさらに小さくなるでしょう。
屋根の寿命が延びる
塗り替えの場合、傷んだ箇所は補修しますが、屋根そのものは古いままです。ですが、葺き替えで屋根をリフォームしますと、生まれ変わった屋根の寿命はゼロからのスタートです。塗り替え等のメンテナンスより確実に寿命を長くすることができます。
葺き替えのデメリット
工事日数が長い
今の屋根を取り除き、新しい屋根を取り付ける。工程が増えますし、大がかりな工事になりますので、それだけ日数もかかります。
費用が高め
工事日数が増えるということは、人件費が上がります。また、新しく屋根を買うわけですから、素材による高低はありますが、総じて費用は高くなります。また、撤去した古い屋根の「処分」にも費用がかかります。塗り替えだけでなく、これから述べるカバー工法よりも費用がかかります。その点を頭に入れておく必要があります。
カバー工法とは?
名前から想像がつくかもしれませんが、今ある屋根の上にカバーするように新しい屋根を取り付けます。「重ね葺き」とも言いますね。
カバー工法のメリット
工事が短期間
古い屋根はそのままで別の屋根を新設するので、工事期間はそれほどかかりません。
葺き替えよりもリーズナブル
今の屋根を撤去しなくて済みますから、「解体」と「処分」の費用がかかりません。その分リーズナブルにリフォームができます。
断熱性&遮音性がアップする
新しい屋根と室内との間に古い屋根が残ることになるので、いわば二層構造の屋根になります。外部からの熱は伝わりにくく、内部の熱は逃げにくくなります。夏は涼しく冬は暖か。冷暖房の使用を控え、「エコ」に繋がるかもしれません。
同じ理由で遮音効果も高まります。
カバー工法のデメリット
重量が増す
屋根材がダブルになるので、その分重くなります。地震の揺れが大きくなる可能性があります。
ただし、工法は常に進化しています。住宅への負担を軽減するため、カバー工法においては、金属素材の軽い屋根材を選ぶことが多くなっています。現在の屋根の素材や重量を考慮して、新たに設置する屋根の素材を選ぶようにしましょう。
傷みがひどいと難しい
カバー工法は、屋根の表面が劣化していても、下地はそれほど傷んでいない、というケースに適した工法と言えます。屋根全体の劣化が激しい、屋根の下地や防水シートなどが腐っている、雨漏りがひどい、など、劣化が進行している場合だと、くさいものに蓋をするだけで、根本的な解決にはなりません。
カバー工法のデメリットについては「カバー工法のデメリットを包み隠さずお話します」こちらの記事に詳しくまとめてありますので参考にしてみてください。
まとめ
葺き替えとカバー工法について説明してきましたが、どちらの工法を選ぶにしても、メリットだけでなく、デメリットの方にもしっかりと目を向けるようにしましょう。
屋根材の種類選びも含めて、予算や屋根の状態、今後の予定など、さまざまな要素を鑑みて、もっともふさわしい方法を選ぶ必要があります。
適切なタイミングで塗り替えや補修のメンテナンスをしていれば、大がかりな工事の回数は少なくて済むはずです。屋根に限らずですが、家屋の寿命を延ばすためには、普段から家の状態を観察して、たくさん愛情をかけることだと思います。