新築のころの家の輝きを
外壁のリフォームの一つに「張り替え」があります。既存の外壁を取り払い、新たな外壁材を張り付けるもので、手間がかかりますが、家を新築同様によみがえらせてくれます。
そこで今回は、主な外壁材の種類(サイディング)を例にとって、外壁の張り替えにかかるおおよその費用と相場について、具体的な数字をあげて解説していきます。
張り替え費用の内訳は?
まずは一般的な費用の内訳を見ていきましょう。
材料費(外壁材など)
塗装とは違い張り替えですので、新しい外壁材を用意することになります。最近では耐久性と価格面から窯業系サイディングボードを使うのが主流になっています。
サイディングボードには複数種類があり、それぞれ1㎡単価が異なります。詳細は後述しますが、この材料費が張替え費用のメインになります。
足場代
作業員が安全に作業する上で欠かせないのが足場です。足場の組立てや設置にも費用がかかります。業者によって金額は変わりますが、1㎡あたり600円~1,000円が相場です。
一般的な2階建て住宅の場合、15万円~20万円で収まることが多いです。まれに「足場代を無料に」と謳う業者もいますが、真に受けないほうが良いと思います。足場代はリフォーム総費用の20%前後を占めます。これをタダにするからには、どこかでその分を補填しなければ成り立たないからです。
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足場の種類や費用についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご確認ください。
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人件費・施工費
プロの業者に依頼するのであれば、当然作業員の人件費がかかります。これも業者によってまちまちですが、一般に人件費は総費用の30%と言われています。
外壁の張替えでは「新しいサイディングボードを張り付ける」「下地補修をする」といった作業が含まれますが、これらも施工費として計上されるのが一般的です。
既存外壁の撤去費用
新しい壁を張り付ける前に、古くなった壁を撤去しなければなりません。撤去作業にも費用が発生します。1㎡あたり800円~1,000円が相場と思っておいてください。
シーリング打ち
サイディングボードの継ぎ目として大切な役割を果たしているのがシーリング(コーキング)です。シーリング工事の目的は、主に雨漏りなどを防ぐ防水効果を確保するためで、この工程にも当然費用が発生します。1㎡900円~1200円が相場とされています。
業者によっては㎡単価ではなく一式で料金計算をすることもあります。この場合は5万円~10万円前後で施工してくれる業者が多いようです。
資材の運搬費・諸経費
資材運搬費は、施工に必要な諸道具を運搬する費用です。
諸経費は見積書に「諸経費」とだけ記載されている場合が多く、疑問を持つ方も少なくないでしょう。
一般的に、リフォーム工事で発生する諸経費とは、「作業車両のガソリン代」とか「作業車両の償却費」などが該当します。また、業者の事務所家賃や事務用品費が計上されている場合もあります。諸経費の目安は総工費の3~5%といったところです。
サイディング材別に見る費用相場
それではサイディング材別の費用相場を確認していきましょう。
窯業系サイディング
現在約7割超の新築住宅で採用されている外壁材です。セメントなどを原料とし、これに繊維質原料を加え成型しているのが特徴です。密度が高く、耐震性や遮音性にも優れ、防火性に関しても他の材質より高いのがメリットです。
1㎡単価は3,000~5,000円となっています。
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窯業系サイディングのメリット・デメリットと外壁リフォームの費用相場を解説
金属系サイディング
表面にメッキ塗装が施された金属板に断熱材が裏打ちされているものが金属系サイディングです。他のサイディング材と比べると軽量なのが特徴です。当然断熱性にも優れています。単価は1㎡あたり4,000円が相場となっています。
金属系サイディングのひとつが、外壁や屋根に使われる「ガルバリウム鋼板」です。
スタイリッシュな外観やメンテナンスフリーで長持ちするところから、近年とくに人気が高くなっているサイディング外壁材です。
ただし、張り替えの費用は他の外壁材と比べて高くなります。
既存のサイディング外壁材からガルバリウム鋼板のサイディングに張り替える際の費用は、1㎡あたり4,000円~6,000円が相場です。
木製サイディング
天然の木材を使用しており、環境面にも配慮されています。天然木が持つ風合いはぬくもりを感じさせ、日本の風土に適していると言えるでしょう。単価は1㎡あたり約6,000円となっています。
樹脂サイディング
主原料に塩化ビニール樹脂を使用しています。
重量が軽く、リフォームに適した材とされています。水や湿気をほとんど吸収しないため、錆や腐食を心配する必要がありません。1㎡あたり8,000~10,000円が相場となっています。
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外壁張替え全体の費用と相場
外壁の張替えにかかる費用の内訳を説明してきましたが、では、それらを合わせた総工費はいったいどれぐらいになるのが一般的なのでしょう。
3LDKで150〜250万円
全国的にもっとも施工事例の多い延床30坪(3LDKタイプ)、外壁120㎡の住宅で外壁の張替え工事を行った場合、総工費は150万~250万円かかると見ておいてください。100万円も差があるのかと思われるかもしれませんが、先ほどから申している通り、こうした工事は業者によって料金体系がまったく異なることを理解しておく必要があります。
予定外の補修費用が発生する場合も
また、たとえば雨漏りの影響で下地材が腐食していた場合には、下地材の交換が必要となり、追加料金が発生します。実際に工事をしてみないと分からないことがあるため、追加料金が発生する場合があることも頭に入れておきましょう。
サイディングの張り替えが必要なタイミングは何年?
どの外壁材にも寿命があります。サイディング外壁の場合は7年~10年に1度の定期的なメンテナンスを行っていれば、寿命が20年以上も長持ちします。
ただし、どれだけメンテナンスを行っていても、年数の経過や気候などによる劣化は避けられません。
以下のような症状が見られるときは、サイディングの張り替えを検討しましょう。
- ひび割れや剥がれ
- 反りや浮き
- サビによる腐食(金属系サイディングのみ)
- 室内への雨漏り
それぞれの症状について、注意すべきポイントをご紹介します。
ひび割れや剥がれ
小さな地震が繰り返し起こったり、建物の立地が交通量の多い道路沿いだったりすると、外壁にひび割れや剥がれの症状が起こりやすくなります。
とくに窯業系サイディングは水分の吸収・乾燥によって伸縮を繰り返す性質があり、「クラック」と呼ばれる大小のひび割れが発生します。また吸収した水分がたまると、内側から破裂して剥がれが発生する場合もあります。
小さなひび割れや剥がれであれば専用の接着剤などで補修できますが、大きくなると雨水や湿気が壁内に侵入して雨漏りの原因となるため、外壁の張り替えを検討しましょう。
反りや浮き
窯業系サイディングは水分の吸収・乾燥によって収縮を繰り返すと「反り」が生じてしまいます。また反りが大きくなると、継ぎ目の部分のシーリングが剥がれて「浮き」が生じ、他のボードとの間に隙間ができてしまうこともあります。
サイディングの反り・浮きは見た目が悪くなることはもちろん、雨水が侵入する原因となります。
素人目に見ても明らかな反り・浮きが生じている状態は、簡単な補修ではもとに戻すことができないため、本格的な張り替えが必要です。
サビによる腐食(金属系サイディングのみ)
金属系サイディングの表面にはさびにくい特殊な加工を施されていますが、何らかの衝撃によってキズがつくと、そこから錆びてしまいます。
また建物の近くに工場や鉄道の線路があるときは、そこで発生した鉄粉が金属系サイディングに付着、腐食して「もらいサビ」を起こしてしまう場合もあります。
小さいサビであれば研磨剤と塗装でコーティングできますが、サビが大きく広がってしまうと素地が傷んで腐食してしまいます。
サビによって腐食した部分は簡単な補修では元の状態に戻すことができないため、外壁の張り替えが必要です。
室内への雨漏り
室内への雨漏り・水漏れは、屋根からではなく外壁からも起こります。
外壁が何らかの原因によってヒビが入ったり、剥がれていたりすると、その部分から壁の内部に水が侵入してしまいます。また室内の結露がひどい場合は、サイディングの症状が原因であるだけでなく、壁内の断熱材が腐敗しているおそれもあります。
このままの状態で放置していると、壁内の木材にまで腐敗が進んでしまい、住宅を支える基礎構造そのものにまでダメージが及んでしまいます。
雨漏りや水漏れ、ひどい結露は室内での対策だけでは根本的な解決とはならないので、早急にプロの診断を受け、外壁材の張り替えを検討すべきでしょう。
サイディング外壁の張り替えはDIYでできる?
サイディングはモルタルやタイルといった他の外壁材に比べて施工しやすいものですが、DIYで張り替えできるのでしょうか?
残念ながら、サイディングの張り替えは職人の専門的な技術が必要不可欠で、DIYでは不可能です。
ただし、塗装程度であればDIYでもできます。
定期的にメンテナンスをすることは、サイディングを耐久性を長く保つためにも重要となります。
最後に張り替えをしてから10年ほど経過している場合は、塗装によるメンテナンスでは補修できない劣化が見つかる場合もあるため、現地調査やメンテナンスを専門業者に依頼することをおすすめします。
外壁張り替えは高いって本当?
「外壁の張り替えは塗装に比べて高い」とはよく言われることです。
割高なのはどうして?
理由は手間がかかるからです。古い外壁を取り払って一度骨組みだけの状態に戻します。取り払った外壁材の処理や下地の工事も必要になります。
ついでに家の内部の点検を
ただし、一度骨組みの状態に戻すことで、躯体や下地材の点検ができます。異常が見つかれば修理も容易なため、建物の内部もをついでに整備することができます。そこまで考え合わせると、長い目で見れば決して割高とは言えないかもしれませんね。
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それでも費用をおさえたい
大きな付加価値があるのは確かですが、それでももう少し価格を低くできないか、そう思われる方もいらっしゃるでしょう。
外壁の重ね張り
その場合、「外壁の張り替え」ではなく「外壁の重ね張り」という方法もあります。
これは、古い外壁を新しい外壁材で覆ってしまうリフォームのことです。ただ重ねるだけではなく、古い壁の上に下地材の銅縁を設置し、その上から新規の外壁材を張り付けます。これにより、古い外壁を撤去する費用が節約できるわけです。
どれくらい節約できるかと言うと、これも坪数や面積などに影響されるため正確な数字を出すのは難しいのですが、大まかに30万~50万円程度は節約できると思います。
そのため、予算の関係で外壁の張替えが難しいのであれば、重ね張りという方法を検討してみてください。ただし、その場合建物内部の点検補修はもちろんできません。
迷ったら業者に相談
家によって、環境によって事情は変わってきますので、専門家に実地に見てもらって話を聞くのが一番ですね。外壁の状態に応じて適切なアドバイスをしてくれるはずです。