アパートやマンションなど賃貸用の投資物件を購入したとき、利益に直結する入居率や利回りに注目しがちですが、利益を得るとそのぶん税金がかかります。そこで、税務上で大きな影響をおよぼす減価償却を意識すると、節税効果によってより多くの利益を手元に残すことができます。
今回はアパート・マンション経営の節税を目的とした減価償却を分けることのメリットについて解説します。
そもそも減価償却とは
減価償却とは、建物や設備など時間の経過とともに価値が減っていく資産の取得にかかった費用を、取得したときに全額まとめて必要経費とするのではなく、法定耐用年数に応じて毎年少しずつ分割して計上する手続きのことです。アパート・マンション経営では土地と建物のうち、建物部分だけが減価償却の対象となります。
たとえば、5,000万円で購入したアパートを耐用年数20年で減価償却する場合は、毎年250万円ずつの経費を20年めまで計上します。2年め以降は実際に支払っていないにもかかわらず経費として計上できるため、大きな節税効果に期待できます。
さらに、アパート・マンションを購入したときに、減価償却の対象となる建物の一部に「建物付属設備」や「構築物」の勘定を使用するとより節税効果が大きくなります。
建物部分をすべて「建物」で勘定するよりも、「建物付属設備」に分けて勘定したほうが耐用年数が短くなるため、経費の計上が有利になるからです。
建物・建物附属設備の違い
「建物」「建物附属設備」の勘定科目について、具体例と主な耐用年数を解説します。
「建物」とは
「建物」は、長期間にわたって定着することを前提に土地の上に建てられた、屋根・壁・柱から成る工作物のことです。具体的には、住宅、共同住宅(アパート・マンションなど)、店舗、工場などがあてはまります。
住宅・共同住宅の耐用年数は以下のとおりです。
構造または用途 | 耐用年数 |
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの | 47年 |
れんが造・石造またはブロック造のもの | 38年 |
金属造のもの(骨格材の肉厚が4mm超のもの) | 36年 |
金属造のもの(骨格材の肉厚が3mm超4mm以下のもの) | 27年 |
金属造のもの(骨格材の肉厚が3mm以下のもの) | 19年 |
木造または合成樹脂造のもの | 22年 |
木骨モルタル造のもの | 20年 |
建物附属設備とは
「建物附属設備」とは、建物に付属して機能する工作物を指します。具体的な住宅・共同住宅の建物附属設備と耐用年数は以下のとおりです。
構造または用途 | 耐用年数 |
電気設備(照明設備を含む。) | 蓄電池電源設備 6年 その他のもの 15年 |
給排水又は衛生設備及びガス設備 | 15年 |
冷房、暖房、通風又はボイラー設備 | 冷暖房設備(冷凍機の出力が22kw以下のもの) 13年 その他のもの 15年 |
昇降機設備 | エレベーター 17年 |
アーケード又は日よけ設備 | 主として金属製のもの 15年 その他のもの 8年 |
可動間仕切り | 3年 |
「建物」と「建物附属設備」の耐用年数を比較するとわかるように、建物附属設備の耐用年数の方が短めです。取得した不動産を建物附属設備勘定にも振り分けることにより、短期的には減価償却を大きくすることができます。
建物と建物附属設備とを分けて償却するメリット
前述の通り、アパート・マンションの「土地」以外の部分を「建物」と「建物附属設備」に分けて償却するメリットは、「償却期間を短くすることができる」ことです。
償却期間を短くすると、単年ごとの償却費を大きくとることができます。
たとえば、鉄筋コンクリート造の本体部分の耐用年数は47年ですが、建物附属設備の電気設備・給排水設備にも振り分ければ、耐用年数が15年になります。
建物と建物付属設備を一括で償却するよりも、別々に償却するほうが、前倒しでより多くの経費を計上できます。
つまり、多くの経費を計上できるということは、課税所得の対象となる利益(所得)を大きく下げて税負担を減らし、手元に多くの金額を残すことができるようになるのです。
まとめ
これから不動産投資を始めようとお考えの方は、利益のみならず、税金にも意識を向ける必要があります。
可能であれば税理士にアドバイスを求めることが望まれますが、知っている税理士が必ずしもアパート・マンション経営の税務に詳しいとは限りません。節税を考える場合はその分野に強い税理士かを見極めた上で選ぶことが大切です。