店舗の開業を計画されている方は、物件探しのときに「居抜き物件」や「居抜き店舗」をよく目にされるかと思います。
居抜き物件とは、コンクリート打ちっぱなし状態のスケルトン物件とは異なり、店舗の内装設備がそのまま残されている物件のことです。上手に活用すれば、開業までにかかる初期費用を大幅に抑え、浮いた分を他の経費に回すことができます。
今回は居抜き物件とスケルトン物件のメリット・デメリットや、開業までにかかる工事費用の相場について解説します。
居抜き物件とスケルトン物件
店舗用物件には、大きく分けて「居抜き物件」と「スケルトン物件」の2種類があります。
それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
居抜き物件
居抜き物件とは、床・天井・壁・厨房設備・トイレなど、店舗内の主要設備が残っている状態の物件を指します。
入居時点ですでに内装や厨房設備が残されているので、内装に強いこだわりがなく設備の状態が良ければ、大がかりな工事や新たな設備を導入する必要なく、初期費用を抑えて開業できます。
スケルトン物件
スケルトン物件とは、店舗内の床・壁・天井・内装などが何もない「建物の躯体(基礎構造)だけの状態」に原状回復された物件を指します。
内装や厨房設備が何もない状態から自身が開業する店舗を作ることになるため、居抜き物件より自由度が高く、設備の撤去にかかる費用が発生しません。
一方で、全てを新たに作る必要があることから、内装や厨房設備にかかる工事費用がかさみ、工事日程も長くなる傾向にあります。
居抜き物件で開業するメリット
居抜き物件の最大のメリットは、前テナントの内装や厨房設備をそのまま自身の店舗に活かすことができるため、初期費用を抑えて開業ができる点です。
スケルトン状態から店舗の内装を作る場合、業種や立地によっては、坪単価50万円以上かかると言われています。
店舗の広さ、家賃が同じ条件の居抜き物件とスケルトン物件では、前者のほうが初期費用を50%~60%も抑えることができます。
居抜き物件で開業するデメリット
居抜き物件は前テナントの内装をもとに改装するので、スケルトン物件と異なり、デザインやレイアウトなどの自由度が低いというデメリットがあります。ただし、事前に内装を確認したうえで賃貸契約を結ぶため、あまり大きな問題とはならないでしょう。
また、前テナントの印象をそのまま引き継ぐという点もデメリットになる場合があります。
たとえば、「前テナントの人気がなく、すぐに閉店した」「不良のたまり場になっていた」といった悪いイメージは、新しい店舗になっても引き継がれてしまうものです。
その場合は、店舗の外観や広告などで前テナントとは違うことをアピールして、大幅なイメージアップが必要となります。
居抜き物件から飲食店を開業する費用
居抜き物件から飲食店を開業するには、物件取得費、内装費、厨房設備費、什器備品費が主な経費です。
15坪家賃30万円の物件を例に、開業までにかかる費用を見てみましょう。
項目 | 費用のめやす |
物件取得費 | 450万円(保証金10ヶ月、礼金3ヶ月、保証協会1ヶ月、仲介手数料1ヶ月で家賃の15ヶ月分) |
内装費 | 50万円 |
厨房設備 | 50万円 |
什器備品費 | 50万円 |
合計 | 600万円 |
同じ15坪家賃30万円でスケルトン状態の物件から飲食店の開業を目指すとなれば、コンクリート打ちっぱなしの状態から内装と厨房設備の工事が必要となるため、全体の費用は1,000万円~1,200万円程度かかってしまいます。
例えば15坪家賃30万円の物件を、何もないスケルトンの状態から飲食店が開業可能な状態にするためには、物件取得費用450万円、内装費300万、厨房設備200万、合わせて約1000万円の初期費用が必要になります。
一方で、居抜き物件の場合は、前の店舗が残していった内装や厨房設備、什器などを新たな借主が買い取る「内装譲渡料(造作譲渡料)」がかかる場合があります。
内装譲渡料は物件の立地や集客力で算出されるため一概には言えませんが、50万円~150万円が相場です。
このように、居抜き物件はスケルトン物件の場合に比べ、はるかに安い初期費用で開業までこぎつけることができます。
まとめ
居抜き物件のメリット・デメリットや、開業までにかかる費用のめやすについて解説しました。
店舗の内装工事かかる費用をなるべく抑えてリフォームをしたい場合は、複数の工務店に見積もりを依頼して、費用やプランを比較検討することが大切です。
一括見積サイトや口コミ比較サイトなどを参考に、ご自身のご予算や開業プランに合った施工業者をお探しください。