「内装制限」という言葉を聞いたことがありますか?
戸建住宅ではあまり耳にしませんが、大規模な建物や不特定多数の人が利用する建物、地下街など火災が起こったときのリスクが大きい場所では、必ず「内装制限」を念頭に置いた内装工事やリフォームを行う必要があります。
今回は内装制限について極力わかりやすく解説していきます。
内装制限とは
内装制限とは、建築基準法では以下のように規定されています。
「特殊建築物等の内装は (中略) 政令で定めるものを除き、政令で定める技術的基準に従って、その壁および天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにしなければならない。」
よりわかりやすく説明すると、大規模な建物や不特定多数の人が利用する建物、地下街など、火災が起こったときのリスクが大きい場所の壁および天井の内装材は、燃えづらく、かつ燃え拡がりづらいものを使用する必要があるということです。
なお、火は上に燃え広がる性質があるので、フローリング材や畳などの床材は内装制限の対象となりません。
内装制限を受ける建物の種類
建築基準法の「特殊建物等」には、次のような建物が当てはまります。
- 劇場類、ホテル、共同住宅類、百貨店類等の不特定多数の人が利用する建物
- 階数が3階以上、延べ1,000㎡をこえる建築物
- 政令で定める窓その他の開口部の無い居室を有する建築物
- 調理室、浴室その他火を使用する施設を設けた建物
以上の建物にあてはまる賃貸マンションの高層階や調理に火を使う厨房のある店舗などでは、防火性の高い内装材を使用する必要があります。
戸建住宅の内装制限
戸建住宅は火気使用室(ガスコンロを使うキッチンや暖炉等)、無窓室、無窓室からの避難経路については、不燃材料もしくは準不燃材料を使用する必要があります。
ただし、火気使用室が平屋の建物にある場合や、2階建ての2階部分など建物の最上階にある場合は、内装制限を受けません。
具体的な不燃材料
内装制限のある建物の内装材には、どのような材料を使用すれば良いのでしょうか?
国土交通省が定める「不燃材料」には、以下のような材料が挙げられます。
- コンクリート
- れんが
- 瓦
- 陶磁器質タイル
- 繊維強化セメント板
- 厚さが3mm以上のガラス繊維混入セメント板
- 厚さが5mm以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板
- 鉄鋼
- アルミニウム
- 金属板
- ガラス
- モルタル
- しっくい
- 石
- 厚さが12mm以上のせっこうボード(ボード用紙原紙の厚さが0.6mm以下のものに限る。)
- ロックウール板
- グラスウール板
たとえば、ガスコンロを使う飲食店の調理室の壁には、原則として無垢材を使用することができません。
不燃・準不燃加工を施し、国土交通省の認定を取得した天然木であれば使用できる場合があります。
内装制限の事例
内装制限をよりわかりやすく理解するために、ある事例をご紹介します。
ところが、どうしても無垢材にして木の温もりを感じたいという強いご要望があったため、リフォーム費用が追加されますが、ガスコンロをIHクッキングヒーターにするリフォームプランを提案しました。
火を使わないIHクッキングヒーターであれば、キッチンは火気使用室にあたらないため、ご要望のとおりキッチン回りの天井や壁を無垢材にすることができます。ご依頼主様には、このご提案を気に入っていただき、内装に無垢材を使ったキッチンのリフォームを進めることになりました。
事例のように、火気を使用するキッチンまわりの壁・天井の材料は内装制限を受けますが、ガスコンロをIHクッキングヒーターに交換すると内装制限の対象外とすることもできます。
まとめ
火気を使用する飲食店や、戸建住宅、賃貸マンションでも、とくにキッチンまわりの内装リフォームは「内装制限」に気をつけなければなりません。
とくにDIYで壁紙を交換する場合は必ず防火性能のある製品を使用し、火災への対策を万全にしましょう。
内装工事をリフォーム会社に依頼する場合は、管理会社やリフォーム会社に使用できる内装材について相談されることをおすすめします。