店舗やオフィスの内装工事を行った場合、工事にかかった費用は、確定申告にて経費として計上できます。
ただし、内装工事は高額な固定資産扱いとなるため、完了した年に一括で経費として計上するのではなく、何年かに分けて毎年の経費として計上する「減価償却」を行います。
内装工事の費用を減価償却する際は、資産ごとに法律で定められた「耐用年数」が、正しく会計処理する上でのカギとなります。
今回は、内装工事に関する減価償却について解説します。
そもそも減価償却とは
減価償却とは、金額の高い設備や車両など、時間の経過や使用により価値が減少する固定資産を取得した際に、対象の資産を取得した年に一度に経費として計上するのではなく、分割して少しずつ計上することを言います。
たとえば、300万円の設備を購入した場合、300万円すべてを経費として計上するのではなく、「今年は50万、翌年に50万、翌々年に50万円…」というように、何年かに分けて少しずつ償却します。
内装工事やレイアウト変更、オフィス移転は設備投資に含まれ、減価償却の対象となります。
店舗やオフィスなどの「資産」が、内装工事を行ったことで価値が上がり、数年かけて減少していくと考えられるからです。
減価償却の目的
減価償却は、固定資産の取得のためにかかったお金を、その年度ですべて費用として計上するのではなく、収益を得るために利用した期間に応じて費用計上することで、企業の毎年の業績を正確に評価するという目的があります。
これを「費用収益対応の原則」といいます。
たとえば、飲食店が500万円の設備を購入して、支払いをその年度で一度に経費として計上すると、それまで黒字経営できていたのに、その年から赤字に転落してしまうかもしれません。
購入した設備が利益を生む前から経営が赤字になれば、銀行が融資を打ち切ってしまう可能性もあります。
そこで、減価償却によって500万円の設備の購入代金を、毎年少しずつ経費として計上していくことで、毎年の利益が正確に表されるようにするのです。
減価償却額の計算方法
減価償却額の計算方法には、「定額法」と「定率法」の2種類の方法から選択します。
定額法は、減価償却の対象となる固定資産の購入代金を、法定耐用年数の期間で分割し、毎年同額ずつ償却していく方法のことを指します。
定率法は、毎年未償却の金額から、一定の割合で償却していく方法のことで、残存価格が最も高い1年目の負担額が最も大きく、毎年償却するごとに小さくなります。
なお、オフィスの内装工事は平成28年以降、定額法で計算することが定められています。
法定耐用年数
減価償却の対象となる固定資産は、事業者の自由に分割して償却して良いわけではありません。
「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」という法律により、資産ごとに細かく耐用年数が定められています。
内装工事の耐用年数の考え方
減価償却は、対象の資産の価値を何年かに分けて少しずつ償却することですが、内装工事に関しては、「耐用年数」がそのカギとなります。
内装工事の耐用年数の考え方は、それが自社所有の建物に施した工事か、あるいは賃貸物件に施した工事かで変わります。
自社所有の建物に内装工事を施した場合の耐用年数
自社所有の建物に内装工事を施した場合は、建物の耐用年数を使用します。
たとえば、鉄骨鉄筋コンクリート造の店舗用建物の耐用年数は39年、木造の店舗用建物は22年です。
鉄筋コンクリートの建物に、木造の内装工事を行った場合は、鉄筋コンクリートの耐用年数が適用されます。
賃貸物件に内装工事を施した場合の耐用年数
賃貸物件の内装工事の耐用年数は、「期間の定めがある賃貸借契約」か、「期間の定めがない賃貸借契約」かで分けられます。
「期間の定めがある賃貸借契約」とは、オフィスや店舗を借りる契約期間が決まっており、なおかつ更新ができない契約のことです。
この場合は、「賃貸借の期間」がそのまま耐用年数に適用されます。
「期間の定めがない賃貸借契約」とは、賃借期間を定めない契約、あるいは、あらかじめ契約期間が決まっていても、満期になれば更新できる契約のことです。
この場合の耐用年数は、内装工事の種類や使用した材料などにより、ケース・バイ・ケースの見積りとなります。
一般的なオフィスの内装工事は、10~15年の耐用年数が目安として設定されています。
ただし、賃貸借契約の内容が「普通賃貸借契約」であることが条件です。
まとめ
内装工事に関連する費用は、オフィスや店舗の開業資金の中でも、大きなウェイトを占めています。
適切な会計処理をすることで、節税だけでなく、粗利を確保する上でも重要です。
どのように減価償却を行うか、経営者にとって非常に大切な課題ですが、税務申告や会計処理に不安がある場合は、ぜひ税理士や会計士に相談することをおすすめします。