「吹き付け工法」という外壁塗装の方法をご存知でしょうか?
現在は施工数が減少傾向にあるものの、仕上げの美しさや多彩な模様から根強い人気があり、現在も採用されることの多い塗装方法です。
吹き付け工法とはどんな塗装方法で、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
今回は外壁塗装、外壁リフォームを検討されている方を対象に、吹き付け工法でお得に塗装するポイントや注意点を解説します。
外壁塗装の吹き付け工法とは
外壁塗装には大きく分けて、専用のローラーを使って塗料を塗る「ローラー塗装(手塗り塗装)」、スプレーガンという専用の道具を使って塗料を吹き付ける「吹き付け工法」の2種類があります。
1980年代頃までは、新築の外壁の仕上げは吹き付け工法が主流でしたが、最近ではローラー工法が主流となっており、吹き付け工法を提供する塗装業者や技術者も少なくなっています。
吹き付け塗装は主にモルタル外壁の仕上げに施工される塗装方法で、その仕上げ方法には以下の3種類があります。
リシン(1,500円~/平米)
骨材と呼ばれる砂や砂利などを含む混合物を吹き付ける塗装方法で、リシン仕上げをした外壁は砂壁のようなざらつきのある見た目になります。
戦後の日本の住宅で広く普及した外壁の仕上げ方法で、公団住宅や学校の外壁に多く採用されています。
リシンは施工費用が他の塗装方法と比べて非常に安く、手軽な価格で施工できます。また、透湿性や通気性に優れるため、家の構造材の劣化を防ぎます。一方で、表面に凹凸があるため汚れやすいというデメリットがあります。
リシンの耐用年数は4~6年で、ひび割れに強い弾性リシンは8~10年とされています。
スタッコ(2,800円~/平米)
スタッコは「化粧しっくい」とも呼ばれる骨材、セメント、水を混ぜた塗料を吹き付ける塗装方法です。見た目はリシン仕上げとほとんど変わりませんが、手触りは比較的なめらかで塗膜が厚いという特徴があります。
さらに、スタッコ仕上げにはスプレーガンで吹き付けた状態で仕上げとする「吹き放し仕上げ」と、吹き付けた後にコテやローラーで押さえる「ヘッドカット(凸部処理)」があります。
石造り風の重厚感のあるデザインが特徴で、耐用年数も10年と比較的高いところがメリットです。一方、デメリットとしてリシンと比べて凹凸が厚いため汚れがつきやすくなっています。
吹き付けタイル(2,600円~/平米)
吹き付けタイル仕上げは「玉吹き」とも呼ばれ、顔料、短繊維、合成樹脂、添加剤などを混ぜた高粘度の主材を吹き付け、上から塗料を塗り重ねる仕上げ方法です。重ね塗りするため滑らかでツヤのある外観になります。
吹き付けタイル仕上げの耐用年数は最後の上塗りに使う塗料の性能によります。たとえば、シリコン系塗料であれば10~15年、耐久性に優れたフッ素系塗料であれば15~20年に延びます。
外壁塗装に吹き付け工法を採用する基準
吹き付け工法はコスト面で他の塗装方法より優位であるほか、複雑な模様や立体感・重厚感のある外壁に仕上がるというメリットがあります。
では、どのようなケースで吹き付け工法を選ぶと、そのメリットを充分に発揮することができるのでしょうか?
施工期間を短くしたい場合
吹き付け工法が公営住宅や学校といった比較的大型の建物に多用されていたことからもわかるように、外壁の面積が広い場合の塗装方法として非常に有効です。スプレーガンで広範囲を一気に塗装するため、施工を早く終えることができます。
つまり、「施工期間を短くできる=施工費用(人件費)を節約できる」工法が吹き付けなのです。
外壁に凹凸がある
外壁に凹凸がある場合は、吹き付け工法をおすすめします。元の素材に凹凸があると、ローラー塗装や手塗り塗装ではどうしても塗りムラ、塗り残しが出てしまい、せっかくの質感を活かすことができません。
吹き付け工法ならローラーや刷毛では届かない部分も均一に塗装し、凹凸を活かした仕上げが可能です。
個性的な仕上がりにしたい
吹き付け工法の最大のメリットは、外壁が多様性のある模様で美しく、重厚感のある雰囲気を作れることです。また、塗料がスプレーガンで均一に吹き付けられるため、品質の高いきれいな仕上がりになることもメリットとして挙げられます。
仕上がりの美しさは部分補修も同様で、吹き付けで補修した部分はわかりづらく、重厚感を長く保つことができます。
吹き付け工法で外壁塗装をする注意点
吹き付け工法は重厚感のある仕上がりを短期間・低コストで実現できるというメリットがある一方、塗装方法を検討する際に考慮すべきデメリットもあります。
吹き付け工法で外壁塗装をする場合の注意点について解説します。
塗料飛散の問題
吹き付け塗装の最大のデメリットと言えるのが、スプレーガンで塗料を吹き付ける工法であるため、どうしても周囲に塗料が飛散してしまうことです。施工前には飛散防止ネットや養生テープなどを使って周囲への塗料の飛散を最小限に抑える作業が行われますが、養生をしても周囲への飛散を完全に防ぐのは難しいとされています。
したがって、塗装を検討する段階で「住宅密集地である」「どうしても汚したくないものがある」という条件に当てはまる場合は、ローラー工法を採用すべきでしょう。
耐久性の問題
吹き付け工法の中でも比較的施工の費用が安いリシン仕上げは、耐久性が低くメンテナンス周期が短くなってしまいます。さらに、凹凸があるので汚れやすくヒビが入りやすいというデメリットがあります。
耐久性の高い吹き付け工法で外壁を仕上げるには、耐用年数が10年程度のスタッコ仕上げか、耐久力の高い塗料を使った吹き付けタイル仕上げを選択しましょう。
まとめ
吹き付け工法の基礎知識と、ローラー工法と比較した場合のメリット、注意点を解説しました。
独特で重厚感のある仕上がりを実現するには、また周囲への飛散を極力抑えるには、技術力の高い職人を選ぶことが重要です。
施工費用・施工期間で選ぶことも重要ですが、事前に見積もりや現場調査を依頼して、丁寧な説明ができて明瞭な料金設定の業者を選ぶようにしましょう。