外壁塗装にはローラーと刷毛で塗装を行うローラー工法とスプレーガンで塗料を吹き付ける吹き付け工法があります。
吹き付け工法は高速で均一な塗装ができるので広い壁の塗装に向いています。
吹付塗装の方法やそのメリットについて紹介します。
吹付塗装とは
外壁塗装における吹き付け工法とは、スプレーガンを使用し塗料を霧状にして壁面に吹き付ける工法です。スプレーガンは圧縮空気で塗料を吹き付ける工具であり、スプレーで塗るような感覚で均一に塗ることができ、凹んだところや細かい隙間まで塗料が吹き付けられるため仕上がりがきれいに出来上がります。吹き付け工法にも用いるスプレーガンの種類により下記のようないくつかの種類があります。
吹き付けリシン仕上げ
モルタル壁で古くから使われている仕上げ方法でリシンガンを使って塗料に砂の骨材を混ぜた仕上げ材を吹き付ける方法です。リシン仕上げは塗膜が薄く耐久性は低くクラックなどの破損も発生しやすいのですが、施工が早く、低コストでできるので、新築の住宅にはほとんどのもので使用されています。
吹き付けスタッコ仕上げ
外壁にモルタルや合成樹脂を塗り付けその上にセメント・塗料・骨材などを混ぜた仕上げ材を吹き付ける仕上げ方法です。単なるリシン仕上げよりも不均一な凹凸の模様ができます。吹き付けた後はそのまま乾燥させるかローラーで凸部を押さえて平らに仕上げます。そのままのものは細かい凹凸が複雑にできた模様になりますがローラーで抑えると不均一に存在する凸部の表面が平らに削ったような形状に仕上がります。塗膜が厚く重厚感が出るのですが凹凸が大きくへこんだ部分に汚れが付きやすくなります。
吹き付けタイル仕上げ
スプレーガンで下地調整材を吹き付けて玉状の模様を出しその上に仕上げ材を被せていき複層に仕上げていきます。これにもそのままの状態のものとローラーで成形したものがあります。ローラーで抑えると広く平らな部分が広がりその間に凹の低い部分が存在するような模様になります。凹凸のデザインが好まれ、塗膜が厚く、クラックが目立ちにくいのですが職人の腕により出来上がりの良さが左右されます。
吹付塗装のメリット
新築住宅の外壁塗装の関しては、大概吹付塗装が行われています。建物全体を覆って作業することが多いので、塗料の飛び散りも問題にならず塗装時間の早い吹き付け工法が用いられます。
リフォームの場合は外壁の塗り替えは塗料の飛び散りを防ぐための養生の手間の不要なローラー工法が主流に使われています。ただしモルタル壁の場合は現在も吹き付け工法で塗り替えが行われます。
吹付塗装には下記のようなメリットがあります。
模様の表現が可能
吹付塗装のメリットとして挙げられる第一の点は複雑な模様や凹凸のある立体感のある仕上げが可能なことです。
経験のある職人ならば希望に合わせて様々な模様の仕上がりに吹き付けることができ、凹凸のある立体感や重厚感を出した雰囲気などを表現することができます。
また補修跡もわからないように全体の塗膜の品質を均一にでき、仕上がりがきれいになります。
施工が簡単
スプレーガンを使用するので塗装スピードが速く、工場や倉庫、マンションなど広い壁でも広範囲の塗装を短時間で効率的に行なうことができます。ローラー工法で必要な隅部の塗りの残しの処理のための刷毛での作業も必要なく隅部まで均一に塗ることができます。
低価格で塗装が可能
施工時間が少なくて高速に塗装が可能なので施工人員が少なくて済み時間も短いのでその分低価格になります。ただし養生に手間がかかるので規模の小さい壁に対してはあまり効果がありません。一定以上の広さを持った壁に対してローラー工法よりも低価格になります。
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どこでも施工ができる
狭い場所や入り組んだ場所でもスプレーガンと人が通るだけのスペースがあれば施工が可能です。ローラーを使う外壁塗装ではそれぞれの場所に合わせて作業スペースと人の体を支える台が必要ですが、スプレーガンを伸ばして吹き付ければいいので広範囲に作業ができます。
吹き付け工法とローラー工法の比較
吹き付け工法とローラー工法の比較を下表に示します。
項目 | 吹き付け工法 | ローラー工法 |
模様 | 多様な模様が可能 | 単純 |
乾燥 | 早い | 時間がかかる |
塗料の無駄 | 多い | 少ない |
膜厚 | 薄い | 厚くて耐久性がある |
養生 | しっかりした養生が必要 | 少なくて済む |
均一性 | 容易 | 隅などには注意が必要 |
騒音 | 高い | ない |
利用状況 | 新築住宅ではしっかりと養生を行うので選択される | リフォームではこちらが主流 |
一般的には新築住宅では吹き付け工法が、リフォームではローラー工法が多く使われています。特に様々なデザインを要求する顧客には吹き付け工法が好まれます。
吹付塗装の施工上の注意
新築住宅の場合は全く新しく外壁を造っていくのですがリフォームの場合はすでにある壁を補修して塗装を行っていきます。
この場合に吹き付け施工を行うには様々な注意が必要です。
下地処理の重要性
リフォームの場合、すでに過去の外壁があるのですからこの上に塗装をする場合、前の外壁の補修を行い、欠損した部分などをなくしておく下地処理が必要になります。下地処理が不十分だと塗装も均一にできずせっかく塗装してもすぐ傷んでくるようなことが起きます。下地処理の方法は前にある壁の種類によって異なります。モルタル壁の場合は欠損しているようなところにセメントを塗って平らに補修します。窯業系のサインディング壁の場合は外壁材のつなぎ目のシーリング部を補修する必要があります。シーリング部は経年変化で劣化しているので、補修せずに塗装してもその部分から漏水が起こったりします。金属系サイディング壁の場合は錆取りを行う必要があります。十分錆を取らないと塗料ののりも悪くなります。
周辺への影響
吹き付け工法はスプレーガンで高速に塗装を行うのですが塗料の飛散量も多く周辺に飛び散ります。塗装の際には十分な養生が必要で狭い場所に家が建ちこんでいるようなところには向いていません。しっかり養生をして周辺に迷惑を掛けない作業を心掛ける業者を選定する必要があります。
腕の良い業者の選定
吹き付け工法は様々な凹凸のある模様をつくることができますが、その仕上がりの良さは職人の腕の良さにかかっています。長い経験を持った腕に自信のある職人を抱えている業者を選定する必要があります。近年吹き付け工法を行う職人の数が減っているので余計によく調べて対応する必要があります。