屋根塗装を依頼する前に
雨漏りがしたから。勧められたから。屋根塗装を検討するきっかけは、人によってそれぞれでしょう。
普段から直射日光や雨風にさらされている屋根や外壁は、それだけ劣化が進みますから、適切なタイミングで補修やリフォームを行うことが肝要です。
そうは言っても、初めての場合、費用や日数はどれぐらいかかるのか、どの塗料を使えば良いのか、など、分からないことだらけだと思います。分からないからと後回しにして、気がつけばタイミングを逃している、そういうこともあるのではないでしょうか。
業者に依頼をするにしても、何も分からない状態で話をするより、最低限の知識を身につけておいた方が、意思疎通もスムーズになりますし、工事が終わってみたら思っていたのと全然違った、というトラブルも回避できると思います。案外多いんですよ、そういうの。
そこで今回は、屋根塗装の前に知っておきたいことを、6つに大別して解説していこうと思います。
1.費用はケースバイケース
屋根塗装を業者に依頼する場合、まず気になるのは費用のことでしょう。
だいたいの相場を知らなければ、見積書を見ても高いか低いか分かりませんね。価格が適正かどうか判断できなければ、その業者が信頼できるかどうかも判別できません。
もちろん、屋根塗装の工費はもろもろの条件によって違ってくるので、業者によって金額に差が出るのはある程度仕方がありません。
例えば、塗料の種類によって金額は変わります。
塗料として一般的なのは、低価格のものから順に、アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素などがあります。フッ素塗料は高額ですが、それだけ耐久性も強くなります。
安いものと高いもの、金額差はおおよそ1㎡あたり3000円ぐらいです。塗る面積によっても違いますが、一般的に塗料の種類だけで20~50万円違ってきます。
塗料以外にも、足場の設置、養生、下地調整、高圧洗浄などの費用もプラスされます。屋根の種類によって工程も変わるので、別途費用が必要になる場合があります。たとえば、屋根の形状が複雑だったり、勾配がきつかったりすると、費用は高めに設定されます。
塗装費用の目安
条件によって変わってくるのではっきりとは言えませんが、平均的な相場は30~60万円ぐらいでしょうか。
2.施工には1~2週間ほどかかる
屋根塗装は塗料をただ塗って終わりではありません。屋根の汚れを取り、傷んだ部分を補修し、塗装の仕上がりを万全にするためもろもろの手順を踏みます。
屋根の塗装にどのような工程があるか。次にそのことを説明します。見積書の内容と見比べてみてください。
足場を設置する
まず、高所での作業を安全かつスムーズに行うために足場を設置します。
養生をする
足場を設置したら、飛散防止ネットを取り付けます。塗料の飛散はご近所とのトラブルの原因にもなりますので、あらかじめしっかりと対策しておきます。
また、塗料の付着を望まない部位には、それぞれマスキングテープで養生を行います。
屋根の洗浄
普段からマメに家のことをなさっている方でも、さすがに屋根の上がどうなっているかは簡単にはチェックできませんよね。
屋根の素材や環境によって程度は異なりますが、カビやコケなども含めて、屋根というのは思った以上に汚れているものです。また、古い塗膜をしっかり落としてから新たに塗装を行わないと、塗料が完全に定着せず、半端な仕上がりになってしまいます。
これらをまとめて洗い落とすのに、高圧洗浄が必要となります。しっかり洗って、しっかり乾かして、やっと塗るかと思いきや、あと一つ、大切な工程があります。
下地の補修
金属屋根の場合、経年劣化でサビが発生します。まずはこのサビを落とします。
さらに、穴やヒビ割れなど、補修が必要な箇所があれば補修をします。地味ですが、下地の補修は大切な工程です。
ここまでやってようやく塗料缶の蓋があきます。
塗装する(下塗り、中塗り、上塗り)
これも屋根の素材によって若干の違いはありますが、一般的にプロの塗装は三度に分けて行います。
まず、塗料の密着性をアップさせるための下塗りです。これを怠ると、仕上げの塗料がきれいに付きません。
続いて、同じ塗料で中塗りと上塗りを行います。中塗り後に一度乾燥させ、その後上塗りで仕上げます。
塗りの工程は、それぞれ1日かけて行います。屋根の規模によって塗る面積は違いますし、傾斜があったり、複雑な形状をしていると、それだけ作業が遅れる場合もありますが、よほどのことがない限り、プロは対応してくれます。時間がかかるようであれば人を増やしますし、その辺は業者に任せておけば臨機応変にやってくれるでしょう。
一般的に、施工期間の目安は1~2週間程度と思っておいてください。
3.塗料の種類
上にも書きましたが、塗料にはいくつか種類があり、それぞれ期待される役割などが違ってきます。
一般的なのは、アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素などです。さらに高機能な塗料として、遮熱・断熱塗料なども注目されています。
それでは価格の低い方から順に細かく見ていきましょう。
アクリル塗料
費用を安くおさえたい場合はこれですね。ただ、耐久年数は7年程度と短めで、一般的な住宅ではほとんど使われていません。
ウレタン塗料
アクリルよりは少し長めですが、耐久年数は8~10年で、こちらも一般的な住宅で使われることはほぼありません。
シリコン塗料
12~15年程度の耐久年数が期待でき、価格面とのバランスの良さから、現在屋根塗装において最も人気のある塗料と言えます。
フッ素塗料
価格も耐久力も、今回挙げた塗料の中でもっとも上位に位置するのがフッ素塗料です。15~20年はもちますので、一度塗ればしばらくは安心ですね。
4.屋根塗装のタイミング
屋根には、雨風を建物内部に通さないという重要な使命があります。屋根に塗られた塗料が「膜」となって、水も漏らさぬバリアを張ってくれるわけです。ですから、塗膜が劣化すれば、少しずつですが雨水が染み込んで、屋根材にも影響が出てきます。
そうなってくると、単に塗料を塗り替えただけでは、根本的な解決になりません。入り込んだ水分が屋根材を腐食させ、そうした腐食はじわじわと範囲を広げていきます。
塗膜が劣化してきたタイミングで塗り替えを行うことで、屋根材や住宅への浸水を防ぐことができます。被害を食い止め、補修のための大がかりな工事を回避することもできるのです。
塗り替えの目安
一般的に、屋根の塗替えは築後10年と言われています。10年ひと区切りで、リフォームを検討するように心がけてください。
5.足場設置費用の節約術
屋根塗装において、足場の設置費用はかなりのウェートを占めます。また、同じように足場が必要になるのが、外壁の塗装です。どちらも安全かつスムーズに作業を進める上で外せない要素ですが、その都度足場を組んで、また撤去して、とやるのは効率的ではありません。
足場の設置を一回分浮かす
そこで、両方の工事を同時に行って、足場の設置を一度で済ます方法もあります。耐用年数的にだいたい同時期に劣化が進行しますので、早めに計画を立て、業者と打ち合わせをして、短期間に2つのリフォームをまとめて済ませてしまうわけです。
6.見積書をしっかりチェック
相見積もりで念入りに
屋根塗装に限らず、住宅のリフォームにはお金がかかりますから、少しでも安くしたいと考えるのが人情です。
その場合、複数の業者に見積もりを取ってもらう、いわゆる相見積もりは必須となりますが、単純にそれぞれの業者の総額だけを比べてもあまり意味がありません。
ここまでの説明を頭に入れていただければ、業者の話がちんぷんかんぷんということはないでしょう。遠慮はいりませんから、納得いくまで質問して、得心するようにしてください。
たとえば、安い塗料を使えば総額は安くなります。ですが、同じ塗料を使ったとしても、人件費や業者の利益率によって、金額は違ってきます。見積書の内訳をしっかりチェックして、その業者の傾向をつかむようにしましょう。
見積書のどこを見る?
最も注意して見ていただきたいのは、見積書の記載方法です。「屋根塗装工事一式○○円」と、価格がセットで記載されている場合は、どのような塗料を使うか、具体的にどのような工程でリフォームが進行するか、曖昧にされる可能性があります。
「説明が面倒」「言ってもどうせ分からない」業者によって理由はさまざまでしょうが、たちの悪い業者だと、興味も知識もなさそうだとこちらを値踏みして、質の悪い格安の塗料を使われるケースもあります。耐久力が弱く、塗ったと思ったらあっという間に劣化した、なんてことにならないよう注意が必要です。
見積書を比較するときは、「塗料のメーカー」「面積」「単価」「作業工程」などが詳細に記載されているかを確認するようにしてください。
まとめ
基本的にプロの塗装業者に任せておけば安心だとは思いますが、なんの知識もないまま塗装を依頼するのは、正直あまりおすすめできません。
足元を見られる可能性があるだけでなく、家に対する情熱は、相手の業者にも伝わります。気のない様子で「任せます」と言われるより、しっかり向き合って「よろしくお願いします」と頼まれた方が、職人としては気合が入るものです。業者も人間ですから、そういうことは間違いなくあります。
屋根塗装は塗ったら終わりというものではありません。きちんとした業者であるほど、その後も末永くお宅の屋根のことを気にかけてくれるはずです。何かあったときは真っ先に駆けつけて手を貸してくれる。今回の依頼をきっかけに、そういう信頼関係をぜひとも築いてください。