屋根修理の押し売りには要注意
屋根や外壁の工事や修理でよくあるトラブルのひとつに、強引な業者による修理の押し売りがあります。
人の心理につけこむ悪質な行為ですが、手口はパターン化されていますので、落ち着いて対処すれば被害を食い止めることができます。
今回はそのことについて説明していこうと思います。
まず、修理の押し売りとはどういったものでしょう。
頼んでもいないのに、見知らぬ業者がいきなり訪ねてきて、「屋根の瓦がずれている」とか「屋根が危険な状態だ」などと、不安をあおるようなことを言ってきます。さらに「このままだと浸水して家がダメになる」「大きな地震が来たらひとたまりもない」などと、脅迫めいたことも。また、「たまたま通りかかった」、「気になって見過ごすことができなかった」と、善意の訪問であることを印象づけます。「うちならすぐに修理できる」「キャンペーン中なので安くできる」と、たまたま来た割に、用意周到にチラシを見せてきたりもします。
「危ない」と言われて動揺し、どうすればいいかと途方にくれているところへ、初めて会ったとはいえ信頼できそうな人が、普通より安くで工事してくれると言ってくる。「助かった」と、その場で契約してしまう人が少なからずいるのが現状です。マイナス100と言われたあとにマイナス50になると言われ、なんとなく得した気がしてしまうところが人間心理のむずかしいところです。肝心なのは「そもそもマイナスが本当に存在するのか?」と疑いを持つことです。
相手は人間心理に通じ、用意周到。私たちは、こういった押し売り業者に対して、どのように対処すれば良いのでしょうか。
屋根修理の押し売りの例
まず前提として覚えておいていただきたいのは、修理の訪問販売は九割が悪徳業者、と言われているということです。しかし、いざ自分の家が危ない状態だと言われたら、なかなか冷静に考えられないケースもあるでしょう。
敵を知れば・・・、ということで、まずはパターン化された彼らの手口を確認しておきましょう。
近所の屋根を修理していた、という話でちゃんとした業者だと安心感を与え、最初に書いたように、善意の訪問であることをアピールしてきます。屋根が危ない、このままだと大変なことになるが、今ならまだ間に合う。冷静であれば、本当に危ない状態か確かめようと考えますが、すぐに危険を回避したい、できれば少しでも得をしたい、という人間心理を衝いてくる、典型的な手口と言えるでしょう。
住宅メーカー=大手という言葉が与える安心感、無料でというお得感、手口を変えていますが、業者Aの場合と本質は同じです。ありもしない住宅メーカーだったり、大手の実在する会社名を騙ることもあります。「消防署の方から来ました〜」といって消火器を売りつける詐欺の手口もありましたね。無料ならまあ良いかと屋根に上がらせると、そこで何らかの深刻な問題を見つけたとでっち上げて、早急な修理が必要だと圧力をかけてきます。自宅とは言え屋根の状態を正確に把握している人などそうはいませんから、実際に見てきた専門家の意見ということで真に受けてしまい、これは大変だと慌てたところをつけこまれ、一気に契約までもっていかれてしまいます。
これはお得感を最初にアピールして、しかも無料の点検という甘言でつって、その後はA社,B社と同じ手法で契約に持ち込もうとする手口です。屋根修理の相場なんて知らない人がほとんどですから、最初にそう言われると、提示された金額でもなんとなく安いような気がしてしまいます。正規の業者に相談してみたら、キャンペーンじゃなくてもはるかに安かったということもざらにありますし、「今のところ修理の必要はない」と本当のことを言ってくれる業者もいます。あらかじめそういう信頼できる業者と関係を築いておくことも、いざという時に相談に乗ってもらえるという点で、有効な予防法と言えるでしょう。
屋根修理の押し売りはパターン化している
ここまで見てきた通り、屋根修理や外壁塗装の押し売りというのは、表面的な言い方や話の持って行き方こそ違えど、本質はみな同じだと分かります。
お宅の屋根には問題がある。
今のままでは大変なことになる。
うちなら今すぐ格安で修理ができるが、今日までに契約しないと通常料金がかかる。
判で押したように同じ流れです。それでも、危険性をしつこく言われ、場合によっては長々と家に居座られ、不審に思いつつも、最後は根負けして契約してしまう人もいらっしゃいます。
※悪徳訪問販売業者の手口や狙われやすい家について、こちらの記事「訪問販売によるリフォーム詐欺の手口と撃退法を知る」に詳しく書きましたのでご参照ください。
では、実際に彼らが家にやって来た時、どのように対処すれば良いのでしょう。
その方法を、これからいくつかご紹介します。
最初にきっぱり断るのがベスト
押し売りに負けないためのもっとも有効な手段は、はじめにきっぱりと断ることです。「今はその必要はない」「知り合いの業者に見てもらっている」など、言い方は何でも良いので、最初の段階で毅然と断ると、業者も暇ではないので、あっさり引き下がる場合がほとんどです。詐欺を働こうとする人間は、こちらの出方をじっと観察していますから、脈がありそうだと見ればぐいぐい押してくる。逆に、断るタイミングが早ければ早いほど、その態度がはっきりしていればいるほど、あきらめるのも早くなる傾向にあります。
それでも、せっかく無料で点検してくれると言ってくれるし、実際屋根の状態も気になるからと、屋根に上げてしまった場合、今度は、診てもらっておいてすげなく返すのも悪いという意識が働きますから、どうしても相手のペースでその後の話が進むことになります。ただより高いものはないとも言いますし、「無料で屋根をチェックしてあげる」そんなうまい話はないと考えましょう。
その場での返答を避ける
業者のペースで話が進むほど、相手は巧妙にこちらの心理を誘導してきますので、断るタイミンングが見つからなくなります。「こんな状態で放っておいたら大変だ」と言われれば、自分が屋根の専門家でもない限り、不安になるのが当然です。そのうち知っている業者に診てもらおうと内心思ったとしても、それをそのまま言うこともできず、何と言って断ろうかと迷ううち、金額や契約の話がどんどん出てきて、「まあそれくらいで済むなら」と応じてしまうのです。知り合いの業者に頼んでももっと掛かるかもしれないし、頼んだとしてもすぐに来てくれるとは限らないし、それだったら・・と、すっかり業者の手の内で転がされてしまいます。「瓦がずれている」「屋根が大変な状態」という相手の一方的な言い分が既成事実化されてしまい、そもそも本当に「大変な状態なのか?」という疑問が抑え込まれてしまっています。
そもそも修理が必要な状態なのか、そこが問題であるはずなのに、相手の思惑通りに誘導されてしまう。実際、費用の請求などいかようにもできますから、何もしないでそっくり懐に、ということもあり得ます。最初は安めの工事を請け負って、信頼関係を築いてから、工事をしていてもっと深刻な問題を見つけた、と言われたら、それを真に受けてしまう危険性はさらに高くなるでしょう。
一度契約を結んでしまうと、それを解除する方法ももちろんありますが、手間がかかるし、面倒だし、どちらにしても不愉快な思いをすることになります。悪い話じゃないと思えたとしても、その場で契約を結ぶことだけは、どうにか思いとどまってほしいですね。
断りづらい場合の方法としては、「夫に相談してみる」「家族で話し合ってみる」など、自分ひとりでは決断できないことを理由にするのが一番です。それでも食い下がるようなら、「検討してみますので、名刺を置いていってください」と言ってみましょう。先程も述べたように悪徳業者も暇ではないので、自分に決定権がないことを伝えれば、それ以上時間を使っても無駄だと考えるようになります。これ以上しつこくして話をこじらせるより、少ないながらも後から電話がかかってくる可能性に賭けてみるかと、要はそういう気にさせること、その場での契約をあきらめさせることが大切です。
契約してしまった場合は消費生活センターに相談を
それでも業者が居座ろうとした場合は、ためらわず警察に通報しましょう。警察の名前を出されてそれでも居座ろうという業者はまずいません。警察に目をつけられたら悪い商売ができなくなりますからね。こちらの弱気につけ込んできますが、こちらがきっぱりと強い態度を見せれば、おとなしく退散する場合がほとんどです。
とはいえ、警察に通報するというのは、それだけでも勇気のいることですし、相手の逆上を恐れて、なかなか冷静ではいられないでしょう。騒ぎになることを恐れたり、近所の目を気にする人も少なくありません。
何もできずに契約を結ばされたとしても、あきらめることはありません。その場合は、業者が帰った後、なるべく早い段階で、消費生活センターに相談しましょう。
同センターには、全国から同様の苦情や相談が多数寄せられています。業者相手の適切な対応の仕方や、契約解除のために何をすべきかを丁寧に教えてくれます。
電話番号は市外局番なしの「188」です。
契約から8日以内ならクーリングオフができます
望まない契約をしてしまった場合の切り札がクーリングオフです。
契約から8日以内であれば契約の解除ができて、支払いの義務も発生しないという制度です。
悪徳業者の中には、クーリングオフを申し込んでも、「もう準備が済んでいる。今更取り消しはできない。契約をキャンセルするなら実費を支払ってもらう」と言ってくる業者もいます。
しかし、クーリングオフは、たとえ実際に工事が行われたとしても、望まない契約であれば、契約から8日以内に解除すれば、支払の義務は一切生じません。
クーリングオフの意向を口頭で伝えても、聞いていない、知らなかったとしらを切る業者もいます。そうならないよう、書面で申し込みをするのが確実です。書類の作り方については、先の消費生活センターで教えてもらえます。
念を押すのであれば、内容証明郵便で送りましょう。クーリングオフを申し込んだことの確かな証明になります。
一点注意しなければいけないのは、クーリングオフは、あくまで業者の方が訪問販売を行ってきた場合のみ有効だということです。こちらから業者を呼んだ場合はその限りではありません。
押し売りに狙われないようにするには
ここまで、押し売りが家に来た時の対処法を縷々説明してきましたが、押し売りを防ぐ一番確実な方法は、彼らに目をつけられないよう、自分の家のことをよく知り、しっかりと管理することです。
家屋だけでなく、植木や花壇がきれいに整備されている家は、隙がなさいと見なされ、押し売り業者に敬遠されます。
前の記事でも書きましたが、大切な家族を守ってくれる家なのですから、悪徳業者に言われて思い出すのではなく、定期的にチェックし、メンテナンスを行ってあげてください。
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