外壁塗装を業者に依頼すると結構お金がかかります。壁にペンキを塗るだけなのにどうしてこんなにかかるんだ、と思われる方が多いと思いますが、誤解があります。
外壁塗装は、画用紙に色を塗るのとはわけが違います。色を付けるだけが目的ではなく、塗装によって形成される塗膜が、建物を守る盾の役割を果たしてくれるんですね。盾を強くするために手間をかけます。さまざまな工程があります。塗料も通常3度塗ります。
それにしても高い、なんとかDIY(自分)でできないものか、そうおっしゃる方が私の周りにもいらっしゃいます。そういう方は、私は止めません。むしろ積極的にお勧めしています。自分の家を自分でケアしようという心がけは立派だと思います。
ただ、もちろん骨が折れます。手間がかかりますし、業者に頼むより安くで済むとはいえ、経費もそれなりにかかります。そうした点を踏まえて、準備万端怠りなく、安全面にもしっかり留意して、そのうえで我が家の壁を塗る喜びにひたってもらいたい、というのが本音です。
そこで今回は、DIYで外壁塗装を行うための注意点や、準備するものなど、8つの項目にわけてそれぞれ解説していこうと思います。
足場を設置する
外壁塗装を業者に依頼した経験をお持ちの方はご存知かと思いますが、足場の設置には結構お金がかかります。
外壁塗装をDIYでやるとなれば、ここをざっくりカットできる。ひとりでぼちぼちやるんだから、はしごや脚立で十分・・・。
ちょっと待ってください。そこは端折っちゃいけません。高所での作業に慣れたプロでさえ足場を使うんです。危険だとわかっているからです。
不安定な脚立の上で、刷毛とペンキ缶で両手はふさがっている。届きそうで届かず手を伸ばす。背を伸ばす。ぐらり。バランスを崩したらどうなりますか。折悪しく突風が吹くかもしれない。立ちくらみやめまいに襲われるかもしれない。両手がふさがっていて、反応が遅れる。週末に楽しく壁を塗るはずが、けがをして平日の仕事にまで影響が出るかもしれない。
悪いことは言いません。お金はかかりますが、足場だけは必ず組むようにしましょう。最近はDIYに興味を持つ人が増えたおかげで、足場もレンタルできるようになりました。そうしたサービスを利用する場合も、くれぐれも組み立てには注意してください。
▼関連記事
外壁塗装で足場は欠かせない?足場の重要性をまとめてみました
安全対策は念入りに
下から見るのとは大違いで、足場の上に実際立ってみると、その高さに恐怖を感じる人が少なくありません。落ちないことが望ましいのですが、それでも万一に備えて、ヘルメットや命綱を用意して安全対策を徹底しましょう。「自分は落ちない」という根拠のない過信ほど危険なものはありません。怪我をされた方は判で押したように「もっとちゃんと対策しておけばよかった」と後悔されます。皆さんはそうならないよう念には念を入れてください。
必要なアイテムを揃える
DIYで塗装をするとなるとそれなりに道具が必要ですので、まずはそこから用意していきましょう。
ヘルメットと安全ベルト
ヘルメットは2,000~5,000円で購入できます。あるとないでは全然違いますので、必ず用意してください。安全対策のベルトは、胴につけるものやハーネスタイプなど、種類によって価格帯が異なり、おおよそ3,000~15,000円くらいで買えると思います。
ローラーや刷毛
ホームセンターなどで500~1,000円程度で購入できます。水性用と油性用で刷毛の種類が変わります。何本か用意して塗料によって使い分けるのがいいでしょう。
汚れ落しのブラシやスポンジ、ホース
スポンジやブラシは500~1,500円ほどで購入できます。また、自宅にホースがあればそれを活用ができますが、長さが足りなければ新たに長いものを準備しましょう。30mで3,000~5,000円くらい、50mで5,000~10,000円くらいが目安です。
家庭用の高圧洗浄機
最近の家庭用高圧洗浄機のなかには50,000円近くする高機能なものもありますが、15,000~20,000円くらいのもので十分だと思います。
▼関連記事
高圧洗浄って外壁塗装に必要?知っておきたい費用、水道代のこと
養生のためのビニールシート、マスカーテープ
塗る範囲によって使用する養生シートやマスカーテープの量が変わってきます。全体の外壁を塗装する場合、目安として20,000円前後でおさまることが多いようです。
下塗りの塗料
下塗り塗料にはシーラーやフィラーなどの種類があります。選ぶタイプによって異なりますが、10,000~20,000円くらいで用意できるかと思います。
仕上げの塗料
仕上げ塗料にもシリコン系、ウレタン系などいくつかの種類があります。仕上げ塗料は、中塗りと上塗りの2回使用で一戸建てを塗るなら結構な量が必要となるでしょう。グレードによりますが、50,000~100,000円くらいはかかるかと思います。
マスク
塗料のニオイが強いので、マスクを使用しましょう。300~500円くらいで購入できますね。
これらが一般的に外壁塗装を自分でするときに揃えたい道具です。ホームセンター、インターネットなど、どこから買うかでも金額は違いますが、すべて揃えると10~20万円くらいはかかると想定しておきましょう。
塗装の手順を知る
先述しましたが、外壁塗装は単純に上から塗って終わり、ではありません。
さまざまな工程があり、手順に従って正しく行わなければ、せっかく塗った塗料の本来の効果も期待できません。外壁塗装を成功させるには、手順通りに進めていくことが大切です。
それでは一般的な流れについて説明します。
足場を組む
安全のため、そして作業効率をよくするため必ず設置しましょう。レンタルして自分で組む場合はくれぐれも念入りにしてください。
汚れの除去
塗装の前に必ず汚れを落とします。外壁の汚れや傷み具合は、それぞれの住まいによって違うと思いますが、なかにはカビやコケが発生しているところもあるでしょう。その場合はホースで水をかけ、ブラシを使って丁寧に取り除いていきます。それでも落ち切らない場合は、高圧洗浄機を使うと効果的です。頑固な汚れがみるみる落ちていきます。洗った後は外壁をしっかり乾燥させましょう。
塗料の飛び散り防止に養生をする
塗料がついてほしくない部分を保護していきます。ビニールシート、マスキングテープ、マスカーテープなどを丁寧に張っていきます。
下地を補修する
外壁の目地部分のコーキングが傷んでいる、ひび割れが発生している状態だと、雨漏りの原因にもなります。目地部分が縮んで隙間ができているなど劣化が見られたら、コーキングを新しく充填し補修します。
また、古い塗膜が残っていると塗料を塗ったときにしっかりと密着できずに「色ムラ」の原因になります。サンドペーパーを使用して旧塗膜やサビを取り除けば塗りやすく、仕上がりも良くなります。
塗装する
塗装は基本的に「下塗り・中塗り・上塗り」と3度塗ります。下塗りは、上から塗る塗料を密着しやすくするためのものです。中塗りと上塗りは同じ塗料で、色ムラに気をつけて均一になるように塗っていきます。
後片付けをして完了
これで塗装は終わりです。足場を解体してもらいましょう。
外壁塗装には時間がかかる
業者に依頼すれば、その道のプロの皆さんが、短期集中で作業を進めます。やはり長年の経験は伊達ではありませんから、予定通りに塗装を完了してくれるはずです。
しかしDIYの場合、作業に慣れない人がぶっつけ本番で塗装を進めるわけですから、予想外のことが起きたり(たとえば途中でペンキがなくなるとか)、なかなか思うように進みません。
休日を利用すると言っても、仕事や家の都合で時間を確保できないこともあります。乾燥させる工程が大事な塗装では、雨降りなど天候の悪いときには塗装ができません。
業者に依頼して集中的に作業をしてもらうケースと比較すると、かなり期間が長くなる覚悟をしておきましょう。作業に費やせる時間にもよりますが、土日などの休日をメインに行う場合は、全体で2~3か月かかってしまうことが多いです。
▼関連記事
乾燥時間はしっかりと
自分で塗装をすると「早く終えたい」という気持ちから、すべての工程を急ぎがちでしょう。外壁塗装は「しっかり乾燥させる」のが成功のコツです。本来乾燥させるべき工程を半乾きのような状態で塗れば、本来の効果が全く期待できないでしょう。
長い期間と危険なリスクを背負って自分で行った塗装も、数年後に再塗装になったというケースもあります。
市販の塗料には、どのくらいの乾燥時間が適切か…などの注意書きが記載されていますので、よく読んで乾燥時間も大事にしてくださいね。
安い塗料にこだわらない
「とにかく安く抑えよう」と一番安い塗料にするのは、あまりよくない考え。なぜなら、「塗料の安さ=耐久性の年数の短さ」と比例しているからです。さまざまな塗料が販売されていますが、塗料の主成分によって寿命も異なるので、慎重に選んでくださいね。
もちろん耐久性の短さを承知のうえで安い塗料を購入した場合には、次の塗装の時期が早めにくることを理解しておく必要があります。
休憩を取りながら無理のない作業をする
仕事が休みの日に外壁塗装を自分でする場合、体の疲労には気をつけましょう。そもそも仕事の休日を利用しているので、体が疲れたままの作業になることも多いでしょう。
しかも、「落ちないように」「しっかり塗らなければ」と、緊張しながら慣れない作業に疲労の進みが早いもの。小刻みに休憩を取りながら作業をしてくださいね。
また、高温日などには熱中症のリスクも高まります。天候や自分の体調を十分に考え、無理のない作業を進めていくことが大事です。
まとめ
DIYという言葉は楽しいイメージがあります。しかし、「安さ」と「楽しさ」の両方を期待して安易な気持ちで外壁塗装のDIYに取り掛かると、「思ったよりも大変」「上手く塗れない」「高いところが怖い」など思わぬ壁にぶち当たることもあります。
途中でリタイアしてから業者に依頼すれば、やり直しとなり結果的にかなりの費用をかけることも考えられます。それらの注意点を事前に納得してから作業を進めることが大事です。
もし少しでも自信がないのなら、プロに依頼して満足度の高い外壁塗装をしてもらうようにした方がいいのかもしれませんね。